映画『さがす』はラストでなぜ気づいた?元ネタ事件、口パクの意味やピンポン玉が写っていない理由を解説考察
2022年1月21日公開の映画『さがす』。
『岬の兄妹』以来の2作目となる片山慎三が監督を務めました。
普段はコミカルな演技を見せている佐藤二郎ですが、この映画ではイメージが一変するような役柄を主演で演じています。
映画『さがす』の口コミ評判レビューには、
- サイコスリラーというかサスペンスのような映画
- かなり没入感をもって楽しめた映画
- ラストシーンが後引く感じの演出で良かった
- 佐藤二郎、伊東蒼の演技がとても良かった
- 映画好きの間で話題になっているだけの評価はあったと思う
- 衝撃のラストで圧巻の作品でした
- 一瞬たりとも飽きる事は無いストーリー
- 映画を通して考えさせられることが多かった
という声が多数集まっています。
目次
最後になぜ気づいたのか?ラストの口パクの意味やピンポン玉が写っていないのはなぜ?
考察解説①最後になぜ気づいたのか?
本作『さがす』のラストでは、娘の楓が智が連続殺人犯である山内に協力し、犯行を手伝っていたことについて知っていると打ち明ける衝撃の展開が待ち受けます。
楓はなぜ最後に気付いたのでしょうか?
智の細かい変化に楓は気付いていた
楓が智の犯行に気付いたのは、山内が持っていた智の携帯を入手したことが大きな決め手になったと思いますが、家族としてずっと智と暮らしていたのですから楓はずっと前から智の細かい変化に気付いており、何かを隠していることについて分かっていたと考察できます。
最初に和田からの報酬がクッキーの箱の下に隠されて送られて来た際も必死にごまかしていましたが、突然送られて来たクッキーとどう考えても動揺している智の姿を楓は怪しんでいたのだと思います。
そして、温厚で心優しい智が正当防衛とはいえ、犯人の和田を撲殺したという行動についても不審に思っていたのでしょう。
智が運用していたSNSのアカウントとパスワードが書かれたコースターを何かのはずみで発見し、SNS上での連絡がつながったことから父親のこれまでの犯行を確信し、最後の最後で涙ながらに打ち明けたのだと考察できます。
山内亡き後、なぜ智が再びSNS上で自殺志願者と連絡を取ろうとしていたかについても明らかになることはありませんが、おそらく警察からの懸賞金が満額はもらえず、ムクドリの謝礼も60,000円と大した金額ではなかったことから、卓球場は再開できたものの、これからの生活のことを考えてお金目当てで志願者を募り、自殺幇助をしようと思っていたのかもしれません。
もしくは、山内の犯行を垣間見て、殺人への性的な喜びを抱くように変化してしまった可能性もあると思います。
考察解説②その後は捕まったのか?
楓が智に真実を打ち明けた後、パトカーのサイレンが鳴り響き、卓球場に近付いているように聞こえますが、智は警察に捕まったのでしょうか?
真相については明らかになっていません。
楓が「迎えが来てる」と言っておりますので警察に通報した可能性が高いですが、冗談のつもりで言った可能性もあります。
楓がもしも警察に通報していなかったにせよ、自首を勧めたと思いますから、智はどちらにせよ警察に捕まった可能性が高いと考察できます。
智がその後、警察に捕まったと考えると、ラストのシーンは親子でする最後の卓球練習になる可能性が高いですので、余計に切ない気持ちになってしまいます。
楓は孤児院等で生活することになるのかもしれません。
考察解説③ラストの口パクの意味
楓が智に自身が全ての犯行を知っていることを打ち明けた後に口パクをするシーンがあります。
楓は「わたしの勝ちや」と笑いながら言い、智は「何の勝負やねん」と答えますが、この口パクにはどういった意味があったのでしょうか?
何も知らなかった平和な日々を思い出そうとしていた
口パクをするシーンですが、ラストは楓が智に行っていましたが、映画の序盤では逆に智が楓に向けて行っています。
これは笑った方が負けというにらめっこのようなもので親子で日常的に遊んでいたゲームだったと考えられます。
もしかすると、楓を笑わせるために幼い頃から智が行っていたのかもしれません。
ラストで楓が智に向けて、口パクを行ったのは、父親・智が隠していた真実を知らなかった平和な日々を必死に思い出そうという気持ちのもと、行っていたのではないかと考察できます。
誰にでも優しく穏やかだと思っていた父親が、誰もが恐れる連続殺人犯のサポート役を行っていたのですから、ショックは凄まじく大きいものだったことは容易に想像がつきます。
もしかすると、楓の脳内では、親子の様々な思い出が走馬灯のように蘇っていたのかもしれません。
その中には、元気だった時に母親と一緒に卓球をした素敵な思い出などもあったのかもしれません。
どうにか平静を装うために、口パクをして智を笑わせようとしたのだと考えると、その楓の健気さに胸が締め付けられるような気持ちになってしまいます。
考察解説④ラストシーンでピンポン玉が写っていないのはなぜ?
ラストシーンで楓は智に対して、犯してきた罪を全て知っていることを打ち明けた後に卓球場にて卓球をしますが、最終的には音は軽快に鳴っているにも関わらず、ピンポン玉が全く写っていません。
なぜ、音は鳴っているのにも関わらず、肝心のピンポン玉が写っていなかったのでしょうか?
家族の絆の象徴であったピンポン玉
卓球場を営み、三人が卓球をしていた原田家にとっては、ピンポン玉というのは家族の絆の象徴のようなものであったと考えることが出来ます。
そのため、そのピンポン玉が写っておらず消えてしまっているということは、楓が智が犯してきた罪を知った今、家族の絆は完全に消えてしまったことを表現していると考察することが出来ます。
卓球をずっとやってきた親子にとって、ラリーはいわば親子にとっての重要なコミュニケーションツールだったと考えられますが、ピンポン玉が写っていないということはもはや親子の関係が破綻していることも合わせて表現しているのではないでしょうか。
映画の中盤で、妻である公子を山内が卓球場で絞殺した際に、山内が乱暴にピンポン玉を踏みつぶすシーンがありますが、このシーンについても、夫婦の絆の象徴であったピンポン玉を踏みつぶす=原田夫婦に対して、実は何のリスペクトも持っていないということが表現されており、口では死ぬ権利があるという哲学めいたことを言っていましたが、単に殺害を快楽目的で楽しんでいる人物であるということが分かります。
考察解説⑤山内がムクドリを殺した際に欲情しなかったのはなぜ?
今作で連続殺人の指名手配犯として登場するのが、山内照巳です。
山内は以前は介護士として働いておりましたが、SNS上で自殺希望者とコンタクトをとり、希望通りに殺害を行っていました。
人助けのような言い方をしていましたが、実際は快楽目的で殺害を行う猟奇的な犯罪者であり、人を殺すということに性的な興奮を憶えていました。
遺体に白いソックスを履かせることに強い興奮を憶える特殊な性癖を持っていることが劇中の描写で分かります。
そんな山内ですが、果林島で依頼者であるムクドリに対して犯行に及んだ際には、いつものように欲情している様子はありませんでした。
なぜ、山内はムクドリに欲情しなかったのか?
その理由について考察していきたいと思います。
ムクドリの生存を本能的に理解していた
遺体にしか欲情しない山内が、ムクドリに白いソックスを履かせても欲情しなかった理由は、死んだと思っていたはずのムクドリが実は生きていたからだと考察できます。
山内自身もムクドリは死んだと思っていたので、いつものように欲情しない自分に戸惑うような表情を浮かべていましたが、前述したように山内は遺体にしか興奮をしないため、頭脳ではなく、本能的にはムクドリが生きていることを理解しており、欲情しなかったのでしょう。
つまり、山内は殺人という性的衝動を頭脳で抑えることは出来ずに、本能のままに犯行に及んでいるということが分かります。
智に対して、友情を感じていた
そんな山内ですが、協力者であった智に対しては友情を感じていたと考えられます。
その理由としては、クーラーボックスに入っていたビールです。
山内は智に対して、今度酒でも奢りますよと伝えており、その約束を果たすためにビールを準備し、ムクドリの殺害が無事に完了したら一緒に乾杯しようと考えていたのかもしれません。
智はお酒を一切飲まないのですが、そのことについては山内は知らなかったのだと思います。
一方、智が山内に対してどんな感情を抱いていたのか伺い知ることは出来ませんでしたが、妻を殺害してもらったという過去があるために非常に複雑な感情を抱いていたと考えられます。
実話映画?元ネタ事件を解説
本作『さがす』ですが、懸賞金目当てで連続殺人犯を追い、行方不明になった父親を捜す娘の姿を描いた作品となっていますが、そのリアルなストーリー展開に実話ではないか?と考える人も多くみられました。
実際はどうなのでしょうか?真相について調べていきたいと思います。
監督・脚本を兼任した片山慎三さん
結論から言うと、本作は片山慎三さんのオリジナル脚本となっていまして、実話ではありません。
片山さんは本作で監督も兼任しており、今作に懸ける思いというのが伝わってきます。
そんな本作は実話ではありませんが、元ネタになったであろう日本の凶悪事件がございますので、そちらを解説していきたいと思います。
主に元ネタになったであろう事件は大きく3つあります。
元ネタになった事件
座間9人殺害事件
座間9人殺害事件は、2017年に神奈川県座間市で9人の遺体が発見された事件です。
犯人はSNS上で自殺志願者と連絡をとり、殺害を行っており、作品中での山内の元ネタになったと考えられます。
また、遺体を細かく切断してクーラーボックスに詰めていたという行動についても山内の元ネタになっていると考えられます。
ALS患者嘱託殺人事件
ALS患者嘱託殺人事件は、2019年にALSの重症患者から依頼を受けて、病院関係者が薬物によって殺害をした事件となっており、妻・公子の元ネタになったと考えられます。
事件の被害者であるALS患者はSNS上で投稿を行っており、その内容についても元ネタになっていると考えられます。
リンゼイ・アン・ホーカーさん殺人事件
2007年に英会話講師であったリンゼイ・アン・ホーカーさんが殺害された事件で、犯人である市橋達也は逃亡中に孤島で生活をしていたり、日雇い労働をしていたりと、山内の行動の元ネタになってると考えられます。
映画『さがす』のあらすじ
『さがす』のあらすじ|指名手配犯を追い、行方不明になった父親・智を捜す娘・楓
中学生の原田楓は、父親の原田智が万引きをしたという連絡を受けてスーパーに駆けつけます。
父親に説教をする楓でしたが、智は指名手配犯である山内照巳らしき人物を見かけたと言います。
奴を捕まえれば懸賞金が300万円貰えると野望を話す智に楓は呆れていましたが、翌日に智は突然行方不明になってしまいます。
担任の教師とともにビラを配り、警察にも相談をしますが、有力な情報はありませんでした。
父親が働いていた日雇い労働の現場に向かい、原田智という人物を見つけますが、父親とは別人でした。
しかし、父親の名を名乗る人物は指名手配犯の山内照巳に酷似していたため、智との関係を疑った楓は男の行方を探ります。
智がかつて経営していた卓球教室に潜伏していた山内を発見した楓は、山内を捕まえようとしますが、山内は楓がつかんだズボンを脱いで逃走します。
『さがす』のあらすじ|智を追い果林島へ向かう楓たち
山内のズボンのポケットから果林島という島の乗船券が入っていたことから、自分に好意を寄せるクラスメイトの花山とともに果林島へと向かい、民家で発生した事件現場で横たわる智を発見します。
事件から3ヶ月前、山内は複数のアカウントを持ち、SNS上で自殺志願者と連絡を取り、自殺幇助を行い、何人もを殺害していました。
ムクドリというハンドルネームの女性から依頼を受けて潜伏先のアパートで犯行を行う最中に警察が現れてしまい、山内は逃走します。
果林島という島に逃亡した山内は、親切に食事を世話してくれた農夫を無惨にも殺害します。
そして、自殺幇助の協力者であった男から連絡を受け、再び大阪へと戻ってきます。
その協力者の男とは、実は原田智でした。
『さがす』のあらすじ|指名手配犯の山内と実は繋がっていた智
事件から13ヶ月前、ALSという難病を患ってしまった妻・公子の介護を行なっていた智は介護士であった山内と知り合います。
病が進行し、死にたいと口にするようになった公子に頭を悩ましていた智は山内に相談したところ、山内は自殺幇助を提案します。
否定的だった智でしたが、誰にでも死ぬ権利があると説得する山内の意見を受け入れ、山内は卓球場で公子を絞殺します。
その日以来、智は山内に協力し、自殺志願者と山内の橋渡し役としてSNSアカウントを運用し、山内の犯行の手伝いをしていました。
山内が犯行に失敗したムクドリは自殺に失敗し、半身不随になっており、再び犯行を依頼します。
経済的に困窮していた智は山内の懸賞金を狙ってある計画を立てるのでした。
果たして、その計画とは?
結末が気になる方は実際に映画を観ることをオススメします。
映画『さがす』の感想評価とみんなの口コミ評判レビュー(※ネタバレ有)
感想評価(※ネタバレ有)|「岬の兄妹」の片山慎三監督が贈る行方不明になった父親を捜す娘の姿を描いた犯罪ドラマ作品
本作『さがす』は、懸賞金のために連続殺人犯を探すため、行方不明となってしまった父親の行方を追う娘の姿を描いた犯罪ドラマ作品となっています。
監督を務めたのは、障害を抱えた兄妹の姿を描いた『岬の兄妹』でセンセーショナルなデビューを飾った片山慎三監督で、今作でも作品のその衝撃的な展開で話題を集めました。
物語は大阪の下町に住む中年男性・原田智が懸賞金がかけられた連続殺人犯・山内を追い、行方不明になってしまい、娘の楓が必死に捜索を続けるところから始まります。
原田智を演じたのは、コミカルな役柄が多い印象のある演技派俳優・佐藤二朗さんですが、本作では善人なのか悪人なのか分からず、掴めない智というキャラクターを時にコミカルに、時にシリアスに演じています。
作品の中では、自殺志願者に自殺幇助するふりをして殺害を楽しむサイコパスな殺人鬼・山内が登場しますが、無惨に殺害するシーンやはっきりとではありませんが死体が描かれるシーンもありますので、グロテスクなシーンが苦手という方は注意した方が良いと思います。
作品が進むにつれて、智が実は難病に苦しみ、自殺願望があった妻の殺害を山内に依頼、そしてSNS上で自殺志願者を募り、山内に紹介する殺人の橋渡し役をしていたことが明らかになる衝撃の展開となっていきます。
歩くことすらままならず衰弱し、死にたいと訴える妻、そんな妻の様子に胸を痛める智の姿が映し出されますが、人間の極限を描いたようなその描写が実にリアルに表現されています。
そして、智の事実を知らずに、健気に智の捜索を続ける娘・楓の姿にも胸が締め付けられるような感情を覚えます。
終盤では、懸賞金のために山内を騙して、被害者のふりをして警察に突き出すことに智は成功しますが、ラストでは楓が実は智が行ってきた全てを知っていたという更に衝撃の展開が待ち受けます。
ラストシーンでは、懸賞金で経営を再開したであろう卓球場で親子二人が卓球をするシーンが描かれますが、静寂の中でピンポン玉の音がとても寂しく鳴り響いていきます。
そして、パトカーのサイレンもうるさく流れますが、智が逮捕されたかどうかについては明らかにならないまま映画は終わりを迎えます。
全体的にシリアスなムードになっており、観ていて辛くなってしまうようなシーンも多いですが、生きる権利があるように死ぬ権利もあるという劇中のセリフなど非常に考えさせられることが多いメッセージ性の強い作品となっています。
自分の人生と照らし合わせて、様々な思いを巡らせながら鑑賞することをオススメします。
映画『さがす』のみんなの口コミ評判レビュー
映画『さがす』の口コミ評判レビューには、このような評判が多い印象です。
「片山慎三監督最新作という事で期待値を上げての観賞だったが、とても良かった」「日本で起こった実話事件をオマージュしてるとも感じて考えさせられた」「役者の演技にただただ圧倒された」「最後まで緊迫した時間を体験できる映画」
それでは、実際の口コミ評判レビューを詳しく見て行きましょう。
★★★★★星5
サイコスリラーというかサスペンスというか胸がぞわぞわする系ですごく好きなやつでした。
なんとなく実際の事件を参考にしているのかな?という設定がいろいろあって、物語に入り込んでいきやすかったです。かなり没入感をもって楽しめた映画です。
佐藤二朗さん、さすがの存在感でした。いろんな俳優さんがいるけど、佐藤二朗さんから出る味のある演技が良かったです。役にぴったりハマっていました。
あとは伊東蒼さんの演技がとても良かったです。これまであんまり追っていなかった女優さんだったけど、これから注目してみようと思います。
これからが楽しみな方だなと思いました。ラストシーンが後引く感じで良かったですね。演出も良かったです。
30代男性
★★★★★星5
映画好きの間で話題になっていたので観に行った。前情報は、「あの佐藤二郎が真面目な役をやる」のみ。
見終わった感想は、これは何というジャンルなんだ?と素直に感じました。
冒頭、万引きをした佐藤二郎を娘が迎えに行く。
お金のために指名手配犯を追いかけて失踪、娘を主人公に据えた父親探しの物語が展開していき、ジャンルは消えた父親を探すミステリー。
衝撃のラストで、今度は父親ターン。ここからが佐藤二郎のやばさ炸裂していきました。
前半の裏側が暴かれるのだが、そこに描かれる貧困、生死の尊厳、正義と悪、人間とは?というテーマ。
人間の生きにくさとか、当たり前の幸せとか、全部詰め込んでるのにくどくならない。ラストのシーンは、父親を探していた娘が真実を知って自分の正義を貫く。
それを肯定も否定もしないラストに吸い込まれてエンドロール。圧巻の作品でした。
20代男性
★★★★★星5
「岬の兄弟」の片山慎三監督最新作という事で期待値を上げての観賞となりましたが、結果、大満足でした。
冒頭の佐藤二朗演じる原田が何かトンカチ?のような物を持って、踊っているようなファーストショットに鳥肌が立ったと同時に”これは面白くなりそうだ!”と思いました。
そして、次のカットでは原田の娘、楓が大阪・西成の街を駆け抜けるシーンだが、まさにここから映画が走り出すと言ってもいいでしょう。
失踪した父親を娘が探すという映画なのですが、その一つの設定で観客をグイグイと引き込んでいくストーリーテリングの凄さには脱帽しました。
一瞬たりとも飽きる事は無い。
ネタバレにはならないと思いますが、クーラーボックスのシーンが好きです。
クーラーボックスから確か缶ビールがこぼれるのですが、何だかこのシーンが妙に焼き付いています。
また、娘がマカロンを頬張る姿もお気に入りです。ちょっとしたシーンでも印象に残るのを作れる片山監督の凄さを感じました。
そして、この作品を観た多くの人が印象に残っているであろう”卓球のシーン”には涙を流しました。卓球をしているだけなのに、なぜにこうも感動するのだろうか。
30代女性
★★★★★星5
映画「さがす」、最初は面白そうだと軽い気持ちで見ました。しかし、映画が始まるとその気持ちもガラリと変わりどんどん引き込まれていきました。
今まで日本で起こった事件をオマージュしてるであろうシーン、そして現愛社会に蔓延る問題。
体が自由に動かなくて本人は生きているのではなく無理に生かされていると考える人、本人に死の願望があるのならその願望通りにしてあげたい思う人。
一方で自分の家族だから生かせてあげたい、体を良くしてまた一緒に生活したいと考える人。
「さがす」の映画を通して考えさせられることが多かったです。途中では本人達に感情移入してしまい、思わず涙してしまいました。
また、全てを語らない最後なので、見終わった後もどう言うような結末なのかを考えさせられました。
「さがす」で語られていたことは、重大な社会問題の一つであり、メッセージ性を感じました。
そして、普段はコミカルな演技を見せている佐藤二郎さんですが、この映画ではイメージが一変するような役柄でした。
20代女性
★★★★☆星4
役者の演技にただただ圧倒しました。特に、佐藤二郎さんの演技が凄すぎました。感情描写がすごく上手で、本当に自分もその場にいるかのように引き込まれます。
また、観ているだけで、不快になるようなご飯の食べ方など、細かいところまで演じていているところ、悲哀の感情や表情の出し方が一度観たら忘れられません。
他にも、清水尋也さんの演技もゾッとしました。「普通じゃない」と思わせるような、感情が全く読み取れないような目つきがすごく印象的でした。
ストーリーは最初の方はただただ「お父さんが生きていますように」と願うばかりでしたが、中盤あたりから真実が明らかになっていき、かなり地獄のような展開でした。
終盤は結構あやふやのまま終わるのかと思いきや、、、
一番最後にパトカーのサイレンを聴きながらお父さんと娘さんが卓球をしているシーンがあり、事件的にはすっきり終わるラストだったのかなと思います。
ですが、娘さんのほうに感情移入してしまい、辛いなという気持ちの方がありました。気持ち的には暗くなってしまう映画ですが、私は好きでした。
20代女性
★★★★☆星4
決して裕福とは言えない家で育った原田楓(伊東蒼)がある日突然いなくなった父・伊東智(佐藤二朗)を探しに行く中で起こる事件を描いた物語、、、
だと思って見ていたら裏切られました。楓は映画の中盤で智を見つけてしまったのです。
そこから急に時間が戻り、さらには視点が変わり、山内照巳(と智)が犯した罪を振り返っていく展開になりました。
もう終わらせてほしい、楽になりたいという人の願いをかなえてあげているという正義感・満足感から抜け出せなくなり、ついには自分の快楽のために人の命を奪ってしまう山内にはとても恐怖を感じました。
また、最終的に生き延びて大金を得ようとした(失敗ではあったが)智と厳しい環境の中でもまっすぐに育った蒼が、二人でラリーをするシーンでは親子の絆を見せるとともに、二人の対比も描いていて泣きそうになってしまいました。
蒼のことが好きな同級生の花山君がとてもかわいくていとおしかったです。
20代男性
★★★★★星5
すでに短編含め、監督4作目の片山慎三。「さがす」は従来の日本映画のサスペンスにあるような、型にハマらず、俳優だけに収まらず、監督も努める佐藤二朗、「空白」でも少ない出番ながら、印象を残した伊東蒼、「渇き」で強烈なインパクトを残した清水尋也など、キャストも実力派。
中でも、行方不明になった父親を探し、奔走する楓を演じる伊東蒼は、物語に違和感なく、演じきっていて素晴らしい。
これから、様々な作品に出続けるに違いないと思いました。二転三転する展開と韓国映画のような強烈さ。PG-12で良いのだろうかと思う。
様々なシビアなテーマを扱ってる中、こうした映画は曖昧な終わり方をすることが多いが、珍しく本作は観客が観た後、奇妙な爽快感をもって、迎えます。
早くも、観た人の今年邦画NO.1が多く、挙げられると言っても過言ではないです。
30代男性
★★★★★星5
父が失踪、その父を訪ねたら全くの別人とすり替わっており、それは危険な指名手配犯だった!そんなミステリアスなストーリーを怪優:佐藤二朗主演で描く…
それは面白いに違いないと思い、公開当日に見に行きました。
佐藤二朗演じる、とらえどころのない父の智は、とことんだらしなく、そこに見え隠れする彼の行動やその動機は全く予想ができません。
その娘の楓を演じる伊藤蒼は、朝ドラ「おかえりモネ」や映画「空白」ではどこか儚くもろい印象でしたが、大阪出身の威勢の良い少女を大胆に表現、大阪の下町を走り回ったり、心無い言葉を投げかけるシスターにつばを吐きつけるシーンは痛快で思わず声を出して笑ってしまいました。
一見、コミカルにも見える本作ですが、逃亡中の凶悪犯:山内を朝ドラ「おかえりモネ」で温厚な好青年役が記憶に新しい清水尋也が、欲望に取り憑かれた不気味な演技を見せ、物語を予想できない混沌した展開へと叩き落します。
物語は、父を探す楓の主観中心で進み、智と山内の関係が除々に明らかになり、また山内の「かなり異常な行動」も時間を遡ってあばかれて行く展開が複雑ながらテンポ良く描かれ、クライマックスまで見る者を惹きつけます。
事件後も智と楓の関係がじっくりと描かれ、歪な親子の物語を魅せてくれます。
登場人物は少ないですが、全てのキャラクターが「重厚であり毒々しい笑いを伴う」見飽きない魅力、狂気を持ち合わせており、それがいつ爆発するか分からず、最後まで緊迫した時間を体験できる映画になっていた印象です。
40代男性