映画『マチネの終わりに』がひどい理由4つ。ラストの解釈、モデルとされる山本美香、実話なのかを解説。

2019年11月1日公開の映画『マチネの終わりに』。
アカデミー賞作品『ある男』など名作を生み出してきた芥川賞作家・平野啓一郎の原作小説を映画化。
舞台はパリ、東京、福岡、イスタンブールなど複数の都市に及び、芸術・報道・遠距離恋愛といったテーマを背景に、福山雅治演じる世界的クラシックギタリストの蒔野聡史と、石田ゆり子演じる通信社記者の小峰洋子の大人の恋愛を描いた作品となっています。
目次
映画『マチネの終わりに』がひどいと言われる理由とは?
映画『マチネの終わりに』は、福山雅治さんと石田ゆり子さんという、日本映画界でも屈指の実力派俳優の豪華共演が話題を呼びました。
少しビターで、人生の岐路に立つ大人たちの恋愛を繊細に描き、興行収入は約9億円を記録しました。
原作は芥川賞作家・平野啓一郎さんによる同名小説で、その豊かな描写力と哲学的なテーマをスクリーンに映し出した作品としても注目を集めました。
しかし、実際に鑑賞した人々の中には「ひどい」という強い感想を抱く方もいます。
なぜ、そうした否定的な評価が生まれてしまったのか?
その理由をいくつかの視点から考察してみました。
ひどい理由①退屈に感じられる展開
映画『マチネの終わりに』は、主人公の蒔野がクラシックギタリストという設定であることから、落ち着いた音楽とともにゆったりと作品が展開していきますが、そのまるでフランス映画のようなゆったりとした展開を退屈に感じてしまう方が多くおり、「ひどい」という感想につながったと考察できます。
大人向けの恋愛映画が苦手という方にとっては、確かに退屈に感じてしまう内容かもしれません。
ひどい理由②キャラクターに共感できない
映画『マチネの終わりに』の軸は、たった一度の出会いから互いに強く惹かれ合う蒔野と洋子の関係です。
しかし、その惹かれ方や決断の速さが唐突に映り、感情移入しづらいと感じられることもあります。
蒔野は一度会っただけの洋子を忘れられず、彼女もまた婚約者との関係を断ち切り蒔野と一緒になろうとします。
この大胆かつ急展開な行動は、現実感を求める視聴者には理解しづらく、映画全体の説得力を削ぐ要因になってしまいます。
原作小説では、二人の内面や背景がより丁寧に描かれているので、二人の心情についてもう少し細かく知りたいという方は平野啓一郎さんの同名小説を読んでみることをオススメします。
きっと、キャラクターへの解像度が高まるはずです。
ひどい理由③マネージャー・早苗の行動
蒔野のマネージャー・三谷早苗は、表向きはプロとして彼を献身的に支えています。
しかし、内心では恋愛感情も持っており、蒔野と洋子のメッセージのやりとりを見て強い嫉妬心を抱いてしまいます。
そして、蒔野に成りすまして洋子に「あなたとはやっぱり会えない」というメッセージを送り、二人がすれ違う原因を作ってしまいます。
そんな早苗の行動について、嫌悪感を抱く方が多くおり、「ひどい」という感想につながったと考察できます。
ひどい理由④キャストがイメージと違う
原作ファンの中には、登場人物のイメージと映画のキャスティングが合わないと感じた人も少なくありません。
主人公・蒔野を演じる福山雅治さん、ヒロイン・洋子を演じる石田ゆり子さんは、どちらも高い演技力と人気を誇る俳優ですが、「原作で描かれた人物像よりも年齢層が高く見える」「雰囲気が異なる」といった意見がありました。
映像化の際の解釈や演出の違いが、このような印象のギャップを生み、「ひどい」という評価につながったと考えられます。
ラストの解釈|その後はどうなったのか?
2人のその後
映画のラストシーンでは、マチネ(昼公演)の後にニューヨークのセントラルパークで蒔野と洋子が再会を果たすシーンが描かれます。
二人の溢れんばかりの笑顔が印象的ですが、その後、二人はどうなってしまうのでしょうか?
原作小説でも二人がその後、どうなったのかについては描かれていませんので、明言は出来ませんが、3つの説があると考察できます。
- 蒔野が早苗と離婚し、洋子と生活を共にするという説
- 情事を楽しむ大人の関係を続けるという説
- 再会を喜びつつも、それぞれの日常に戻っていくという説
洋子は離婚している状況ですので身軽かもしれませんが、蒔野は早苗と婚姻関係が継続中であり、愛する娘・優希もいることから、家族を捨てることは出来ないと考えられることから、3つ目の説が有力ではないかと考えられます。
余韻を残す考察しがいのあるラストシーンになっていますので、二人のその後について、自分なりの答えを考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
蒔野は早苗のしたことに気づいていたのか?
蒔野は早苗が自分に成りすまして、洋子に「あなたとはやっぱり会えない」というメッセージを送っていたことについては気付いていなかったと考えらえます。
その証拠に実家に帰ると家を空けた早苗から、洋子にした罪について記されたメールが届き、そのメールを読んだ蒔野はとても複雑な表情を浮かべていました。
早苗が自分に好意を持っていることを気付けなかったことや結婚し、愛すべき娘・優希も授かっていることから、早苗に対して憤りを感じつつも責めるつもりにはなれず、非常に苦悩していることが感じ取れます。
「私のことは気にしないで、好きなようにして」と早苗が涙ぐみながら言った真意
早苗からのメールが届いてから数か月が経ち、ニューヨークでのコンサートに旅立つ蒔野を玄関で見送る際に早苗は「私のことは気にしないで、好きなようにして」と涙ながらに伝えます。
この発言には、早苗の過去への懺悔と後悔があったと考えられます。
「もしかすると、このまま蒔野が帰ってこないかもしれない」と覚悟はしているものの、蒔野を失ってしまうかもしれない現実に耐えれそうもなく涙を流してしまったのではないでしょうか。
実話映画?モデルとされる山本美香についても解説
映画『マチネの終わりに』には「実話なのでは?」という説があります。
舞台や人物像があまりにもリアルに描かれているため、そう感じる人も少なくありません。
では、その真相はどうなのでしょうか?
ここでは原作小説や登場人物のモデルとされる人物に触れながら、その背景を紐解いていきます。
原作となった人気小説
結論から言うと、映画『マチネの終わりに』は実話ではありません。
原作は平野啓一郎さんによる同名小説で、第2回渡辺淳一文学賞を受賞するなど高く評価されました。
物語はフィクションですが、主人公であるクラシックギタリストの蒔野と、ジャーナリストの洋子には実在の人物がモデルとして存在するといわれています。
蒔野のモデル:福田進一
蒔野のモデルとされるのは、大阪市出身のクラシックギタリスト・福田進一さんです。
原作者の平野さんとは2010年頃から親交があり、福田さんとの出会いをきっかけに「マチネの終わりに」の構想が生まれました。
二人は深夜まで語り合いながら物語を練り上げていったといいます。
ただし、福田さんと洋子のモデルとなった人物が恋愛関係にあったわけではなく、あくまで物語の内容は創作です。
洋子のモデル:山本美香
洋子のモデルとされるのは、イラク戦争など紛争地での取材で知られた女性ジャーナリスト・山本美香さんです。
小説内で洋子がバグダッドでテロに巻き込まれる描写がありますが、山本さんも実際に同地で同様の経験をしています。
この類似点からモデルと推測されていますが、公式には明言されていません。
山本さんは危険と隣り合わせの取材活動を続け、2012年にはシリアでの取材中に銃撃を受け、45歳で逝去しました。
映画『マチネの終わりに』をきっかけに彼女の存在を知った方は、その功績を通じて国際情勢やジャーナリズムの世界に関心を持つ機会としても良いかもしれません。
『マチネの終わりに』のあらすじ
(以下、映画『マチネの終わりに』のあらすじです。)
『マチネの終わりに』のあらすじ|運命的な出会いを果たすジャーナリストの洋子とギタリストの蒔野
パリの通信社でジャーナリストとして活躍する小峰洋子は、日本に帰国したタイミングでレコード会社に勤める友人の慶子に招待され、クラシックギタリスト・蒔野聡史のコンサートを鑑賞します。
終演後の打ち上げで洋子が実は蒔野のデビューコンサートを鑑賞したことがあったことや洋子の父親の映画監督イェルコ・ソリッチは、蒔野が音楽を始めたきっかけであったことから二人はすぐに打ち解けます。
しかし、洋子にはリチャードという婚約者がいたことから打ち上げの後、二人は別れました。
蒔野はスランプ状態に陥っており、予定していたレコーディングやコンサートツアーを中止したいと言い出し、慶子は頭を悩ませていました。
そんな中、パリで大規模なテロ事件が発生し、洋子が巻き込まれてしまい、蒔野は何度も洋子に連絡をとるも返事はありませんでした。
ほどなくして洋子からビデオ通話があり、テロによる心的外傷から憔悴している様子の彼女の心を蒔野は優しくケアします。
『マチネの終わりに』のあらすじ|日本での再会を約束する二人
ほどなくして、マドリードの公演のためにパリを訪れた蒔野は洋子と再会し、婚約者がいることを知りながらプロポーズをし、公演後に返事を聞かせてほしいと伝え、洋子は激しく動揺しながらも蒔野に対して運命を感じました。
同僚がテロ組織の取材中に怪我をしてしまったことからコンサートを訪れることは出来ませんでしたが、蒔野をパリの自宅に招き、洋子は全てを片付けてから日本で再会しようと蒔野に約束し、情熱的なキスを交わします。
洋子が日本へ帰国する日となり、連絡を交わす二人でしたが、突然蒔野の恩師であるギタリスト・祖父江誠一が倒れてしまい、急いで病院へと駆け付けることなります。
タクシーに携帯電話を忘れてしまったことから、蒔野の女性マネージャーである三谷早苗が回収に向かいますが、早苗は蒔野と洋子のメッセージのやりとりを見てしまい、激しく嫉妬します。
早苗はマネージャーとして献身的に蒔野に尽くす中で恋愛感情も抱いていたのです。
『マチネの終わりに』のあらすじ|早苗からの告白、そして、迎えるニューヨークでのコンサートの日
早苗は蒔野に成りすまして、洋子に「君とは会えない」とメッセージを送ってしまいます。
洋子は大きなショックを受け蒔野に拒絶されたと思い込み、二人が会う事は叶いませんでした。
それから、4年の月日が経ち、蒔野は早苗と結婚し、娘にも恵まれ、休止していた音楽活動をニューヨークでのコンサートを機に再開しようと計画していました。
一方、洋子はリチャードと結婚し息子にも恵まれたものの、夫婦間には不協和音が流れ、遂には離婚することとなり、新しい生活を始めようと精力的に動いていました。
そんな中、ニューヨーク公演の下見のためにニューヨークを訪れていた早苗が現れ、あの日のメッセージが自分であったことを謝罪し、蒔野のコンサートを見に来てほしいと伝え、洋子は激しく動揺しながらも早苗を許します。
一方、メールにて早苗から同様の告白を受けた蒔野も激しい感情の波に押しつぶされそうになりながらコンサートまでの間、全力でギターに打ち込みます。
そして、4ヶ月が経ち、遂にニューヨークでのコンサートの日を迎えるのでした。
以上、映画『マチネの終わりに』のあらすじでした。
『マチネの終わりに』の感想評価とみんなの口コミ評判レビュー(※ネタバレ有)
感想評価(※ネタバレ有)|切ない運命に翻弄される男女二人の恋を描いたロマンティックなラブストーリー
映画『マチネの終わりに』は、人気小説家である平野 啓一郎さんの同名恋愛小説を実写映画化した作品となっており、音楽活動以外に俳優としても幅広く活躍する国民的スター・福山雅治さんとその演技力と年齢を感じさせない美しさで幅広い世代に人気を誇る女優の石田ゆり子さんの豪華共演で大きな話題を呼びました。
アラフォーの男女二人が情熱的な出会いを果たすも、運命の悪戯によってすれ違ってしまう淡い恋愛模様が美しい映像によって展開され、日本映画でありながら、どこか異国情緒を感じる普遍的なラブストーリー作品となっています。
福山雅治さん演じる主人公の蒔野が天才的なクラシックギタリストという設定であることから、劇中の音楽も美しくも切ないギターの旋律で彩られており、映画の世界観を存分に惹き立てています。
福山さんは今回の映画のためにクラシックギターを猛練習したとのことで、普段のステージでの姿とは違うものの、クラシックギタリストとして佇む姿も実にリアリティがあり、作品に奥行きを与えています。
僅か数回しか会った事がないのも関わらず、情熱的に引き寄せ合う蒔野と石田ゆり子さん演じる洋子の姿に、こんな恋がしてみたいと思った方も多いのではないでしょうか?
なぜ、二人が運命的な恋に落ちたのか、細かく描かれることはないものの、「人を好きになるのに理由はいらない」というどこかで聞いた明言が思い浮かんでしまうようなロマンティックな二人の姿が描かれていきます。
そんな二人でしたが、蒔野のマネージャーである早苗の悪行によって、お互いに拒絶されてしまったと勘違いした二人はその関係に終止符を打ってしまうこととなります。
お互いに結婚し、長い月日が経った4年後に早苗が二人に告白したことにより、拒絶されていたわけではなかったことを知るわけですが、その時の怒りや喜び、悲しみなど様々な感情が一気に押し寄せてくるような二人の表情がとても印象的に映し出されます。
若手俳優では表現できないであろうベテラン二人ならではの演技は必見です。
映画のラストシーンでは、ニューヨークでの蒔野のコンサートの終わりに二人が4年ぶりに再会を果たす姿が描かれます。
二人がその後、どうなったのかについては本編で描かれることはないものの、まるで子供に戻ったかのように無邪気な満面の笑みを浮かべる二人の表情からは明るい未来が待っているような気がします。
余韻のあるラストシーンについて、鑑賞した方々と意見を語り合うのも面白いかもしれません。
『マチネの終わりに』のみんなの口コミ評判レビュー
★★★★☆星4
様々な作品で見た福山雅治さんも石田ゆり子さんも、美男美女で存在感があり、「らしさ」のある見やすい演技が好きです。
しかし、今回のギタリストとジャーナリストという役柄は、どこかしっくりこないものがありました。
大人の男女の出会いや別れや再会を運命的かつロマンチックに描こうとしたのかなと思いました。
しかし、主役二人の優柔不断さや煮えきらなさやテンポの悪さが印象に残りました。
憧れるような情熱的な恋愛模様を見せてもらったというより、人間年を重ねると考えすぎて面倒だなあという気持ちになりました。
パリやニューヨークの街の撮り方、福山さんがこの映画のために習得したクラシックギターは、ともに趣があり素晴らしかったです。
50代女性
★★★★☆星4
美しい音楽と詩的なセリフが印象的で、また福山正治と石田ゆり子の大人の恋愛、また街の雰囲気などは見ていてすごく良かったです。
今私は30歳だけど、もっと大人になってみたらもっと共感できたり、もっと楽しめるのかなと感じました。
一方で、現実味に欠ける部分が気になった作品でした。
登場人物たちは知的で洗練されているが、それゆえに感情の揺れが観念的に感じられ、共感しにくさもありました。
パリや東京など美しい街を舞台にしているのに、登場人物の心情はむしろ閉ざされていて、景色と気持ちのズレが少し寂しい。
会えない時間が愛を育てるというよりも、言葉の美しさで現実をぼかしているようにも感じました。
ただ、「何歳になっても人生は変えられる」というメッセージには力があり、今後の自分の役にも立つ考えだなと思いました。
現実に疲れたとき、少し距離のある愛を眺めるのにちょうどよい一本かもしれない。
30代女性
★★★★☆星4
福山雅治さんが演じる蒔野聡史と、石田ゆり子さんが演じる小峰洋子が紡ぐ、大人の恋愛を描いた作品です。
心の奥に深く染み入るような恋物語で、どこまでも美しく、音楽も旋律が切なく物語を彩っているように感じられます。
派手な演出や展開はありませんが、静かに感情を重ねていく描写が心地よく、年齢を重ねた方ほど共感できるのではないでしょうか。
人によってはテンポがゆっくりに感じられ、退屈だと思われるかもしれません。
セリフも多くないため、しっかりと集中して見ないと内容がつかみにくいと思う方もいると思います。
ただじっくり考察して楽しむにはとてもよい作品だと思います。
見る人の感受性が試されるような、そんな印象を受けました。
美しい映像と音楽、そして静かな情熱を味わいたい方におすすめの一作です。
30代女性
★★★☆☆星3
小説を先に読んでいたので、映画をとても楽しみにしていました。
原作は静かで深く、人の心の奥にある思いや時間を超えたつながりを丁寧に描いていて、読むたびに胸にしみるものがありました。
しかし映画では、その世界観をすべて表現するのはやはり難しかったように思いました。
映像は美しく、音楽も心地よかったのですが、言葉の力や内面の描写が弱くなってしまった印象があります。
福山雅治さんは静かなギタリストの役に合っていて、石田ゆり子さんも品のある女性を自然に演じていましたが、二人の間にある見えない思いの深さが、映像だけではやや伝わりにくいと思いました。
大人の恋愛として落ち着いた空気感は出ていたものの、小説で感じた時間や距離、運命といった大きなテーマが少し薄まっていたのが残念です。
原作を読んでいない人には、少し分かりにくい部分もあったかもしれません。
50代女性
★★★★☆星4
とにかく主人公2人のすれ違いがもどかしい映画です。
恋愛ものとしてハッピーエンドを期待して見ると切ない気持ちになってしまいますが、ラブラブな恋愛映画が好きではない、「大人の苦い恋愛」が好きな人にはいいかもしれません。
「もしあの時こうしていれば」ということを色々と考えさせられる映画でした。
とにかくすれ違いが多い映画です。
「なんでそこで連絡しないの!」とか「どうして勘違いしたままなの!」って、見ていて何度もやきもきしてしまいました。
運命のいたずらと言えばそれまでですが。。。
ストーリーではありませんが、福山雅治が演じるギタリストがとにかく格好良くて、それだけでもファンなら見る価値はあるかと思います。
パリの街並みもすごく綺麗で、クラシックギターの音色と合わさって、映画全体の雰囲気がとても大人でおしゃれでした。
40代男性
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